LED照明の正しい普及促進のために - 課題と対応 -
(社)日本電球工業会
1.一般照明用LEDへの期待
一般照明用LEDは、1996年実用化されて以来、年々発光効率が向上しており、照明用途への商品化が急速に拡大している。LED照明推進協議会が公表している白色LED(素子単体で且つ素子温度25℃のとき)の発光効率ロードマップ1)(図1)によると、2008年には、蛍光ランプにほぼ匹敵する100lm/Wに達し、2010年には150lm/Wに迫ると予測しており、既に素子単体では、白熱電球やハロゲン電球を凌ぎ、蛍光ランプに匹敵するレベルになっている。

更に、照明器具に組み込んだ時の器具全体の発光効率の改善も進んでおり、ダウンライトをはじめ、各種の照明器具及び電球形LEDランプも商品化され、3月に開催されたライティング・フェア2009では、発光効率80lm/W(平均演色評価数70)を達成したダウンライトも発表された。今後も、LEDの小形、長寿命の特長を生かした商品展開が進むと考えられる。
また、LEDには、従来のランプに比べて配光制御が容易で、光の利用効率を高められる特長があり、点滅や調光も比較的容易というソフト面の利点も多い。LEDの性能向上が更に進み、こうした配光及び調光の制御という利用効率の改善が加わることによって、照明分野における省エネが加速的に進むことが期待される。
このように、一般照明用LEDは、従来のランプにはない新たな照明環境を提供する可能性を秘めており、次世代のあかりとして大いに期待されている。
2.普及促進上の課題と対応
一般照明用LEDが期待通りに発展し、より良い照明が実現されるためには、もちろん、LEDそのものの性能改善も重要だが、安易に従来のランプに置き換えるのではなく、LEDがその特長を存分に生かし、安全且つ適切に活用されることが重要である。そのためには、一般照明用LEDの安全や性能に関する基準、測定の基準などの整備や、市場にある商品が十分な性能を発揮しているかを評価し、その結果を商品に反映することも必要である。
2.1 規格化の推進
(社)日本電球工業会では、一般照明用LEDを正しく普及させるために、(社)照明学会、(社)日本照明委員会、(社)日本照明器具工業会などの照明関連団体と協力し、IEC(国際電気標準会議)とも連携を図り、国際規格に整合したJIS原案作成に総力を挙げている。現在まで、一般照明用LEDに関して、表1のようなJIS及びTS(標準仕様書)が制定されている。
表1. 一般照明用LEDのJIS(日本工業規格) 一覧
| 1 | JIS C 8152 照明用白色発光ダイオード(LED)の測光方法 |
| 2 | TS C 8153 照明用白色LED装置性能要求事項 |
| 3 | JIS C 8147-2-13 ランプ制御装置-第2-13部:LEDモジュール制御装置(安全)の個別要求事項 |
| 4 | JIS C 8153 LEDモジュール用制御装置-性能要求事項 |
| 5 | JIS C 8154 一般照明用LEDモジュール-安全仕様 |
2.2 LED照明製品の評価
最近、世界中で様々なLED照明製品が商品化されつつある中、それらの商品の性能評価も行なわれつつある。
米国・エネルギー省ではCALiPER(Commercially Available LED Product Evaluation and Reporting) プログラムを使って、各種のLED照明製品の性能評価を行っている。その一つとして、既存の蛍光灯照明器具に装着して使用できることを謳っている直管蛍光ランプ形LEDの性能評価を実施し、『これらのLEDランプは、現行の蛍光ランプに比べてまだ性能が低く、蛍光ランプ代替としては不十分である』と評価している2)。
(社)日本電球工業会でも、前述した規格化の活動に加え、LEDのより適切な活用のための情報を収集するため、商品の性能や安全性の検討に着手した。その一つとして、日本国内でも販売が開始されている直管蛍光ランプ形LEDの性能等を検討した。その結果は、資料-1に示すとおりであり、今回試験した製品は、現段階では性能面、安全面とも“蛍光ランプの代替品としては未成熟である”との結果となった。
一方、一体化した照明器具では、現行の蛍光灯器具に匹敵するLED器具が商品化されつつある。この差異は、これらのLED照明器具が、LED素子の性能ではなくLEDの持つ光の利用効率が高いという特長を生かしていることに注目すべきである。
3. おわりに
LEDが今後の照明用の光源として期待が高まる中、(社)日本電球工業会では、これらが安全且つ有効的に活用され、今後の照明を支える一つの基幹光源となるよう、各種の規格策定に加え、製品の調査・評価を進めている。
LEDは、単に従来ランプの代替として製品化しても高い性能が得られるものではなく、そのLEDの特長を生かして照明器具と一体化した光源とすることにより、高い性能が得られることに留意すべきである。
蛍光ランプが出現してオフィスや工場などの作業環境が革新されたこと、HIDランプが出現して投光照明が発達し、交通やスポーツの照明環境が革新されたこと等のように、今後、LED照明が、私たちの生活環境に大きな変化をもたらし、同時に我々産業界にも大きな発展をもたらすことを期待し、(社)日本電球工業会は、LEDが安全且つ有効的に活用されるための、より一層正しい情報を発信していく所存である。
参考文献
[1] LED照明推進協議会,JLEDS Technical Report Vol.2(2008)pp.1.
[2] MA Myer,ML Paget,RD Lingard :Performance of T12 and T8 Fluorescent Lamp and Troffers and LED Linear Replacement Lamps,DOE CALiPER Benchmark report,2009
資料-1 LED照明製品の評価 ~直管蛍光ランプ形LEDの調査結果概要~
1.調査LEDランプ及び比較用蛍光ランプ
(1) 40形直管蛍光ランプと同じサイズの直管蛍光ランプ形LED 7機種(A~G社)
(2) 比較用として、直管蛍光ランプの下記2機種
-現在最も省エネタイプの高周波点灯専用形蛍光ランプFHF32EX-N (R1)
-旧タイプのラピッドスタート形蛍光ランプFLR40SW/M/36 (R2)
2. 一般性能及び省エネルギー性
それぞれの調査LEDランプ及び比較用蛍光ランプについて、入力電力(安定器損失を含む)、全光束、総合効率(安定器損失を含む光源の発光効率)、平均演色評価数及び直下照度(距離:1m)の調査結果を図1~5に示す。
直下照度は、公共施設用の下面開放形照明器具に装着して測定した。





今回調査したLEDランプの省エネルギー性を示す総合効率(図3)は、いずれも高周波点灯専用形蛍光ランプ(R1)のレベルには及ばない。一部(D,E,F社)に、旧タイプの蛍光ランプ(R2)を凌ぐものがある。しかし、本来省エネ光源とは、「単に電力消費が少ないこと」ではなく、「全光束や照度などの性能が同等以上で低電力であること」でなければならない。したがって、今回調査したLEDランプは、蛍光ランプに比べ全光束が約40~45%、直下照度も約60~70%と低いため、蛍光ランプ代替の省エネ光源とは言えない。
今回の調査時のコストは、イニシャル及びランニングコストを総合して、大半のものが蛍光ランプより高コストである。なお、寿命は4万~8万時間と発表されているが、連続点灯でも確認には4~9年を必要とし、いずれも推定値と思われる。
3. 安全性
3.1 機械的安全性
各ランプの質量(図6)は、7機種中3機種がJIS C 8105-1で定めた、蛍光ランプ用口金(G13)を装着したランプなどの質量の許容限度(500g)を超えている。衝撃、振動などによる器具からの脱落などが懸念される。

3.2 電気的安全性
一般的な電気製品の安全基準(絶縁/沿面距離、配線処理、感電防止など)に照らしたとき、調査した全ての製品に何らかの不具合がみられた。例えば、一般的な電気製品の安全基準である「電気用品安全法・技術基準別表第八」の異充電部間及び充電部と非充電部間の絶縁距離の規定に対して、7社中5社が満足していなかった。
3.3 誤使用による安全上の懸念
今回調査したLEDランプは、(1)商用電源を直結するタイプ、(2)既設安定器に接続するタイプに大別される。(1)は使用する既設器具の内部結線の改造を必要とし、また電源の印加箇所の違いによって3種類のタイプがあり、それぞれ改造仕様が異なる。
したがって、一旦改造された器具は、その改造に適合するLEDランプを装着する必要があるが、使用してはならない蛍光ランプ、あるいは互換性のないLEDランプが、誤って容易に装着される可能性があり、その場合、例えば電源短絡や安定器のフィラメント回路短絡などの安全上の懸念がある。
照明業界では、このように互換性が無く、且つ誤装着による安全上の懸念がある場合には、間違って装着されないように、口金及びランプ長の変更、誤挿入防止ランプソケットなど、安全性への配慮を行ってきた。
今回調査した直管蛍光ランプ形LEDにも、これまでと同様の配慮が求められる。
4. まとめ
以上の通り、今回試験した製品は、現段階では性能面、安全面ともに蛍光ランプ代替の省エネランプとしては、未成熟であるとの結果となった。この種のランプ採用の検討に際しては、表示やPR資料に頼ることなく性能と安全性を十分確認することをお勧めしたい。






